カミワザ用の遮光板を作ってみる(^^)

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ヒガンバナやソバの花も咲き始めましたね。昼夜の気温差も大きくなって、フォトジェニックな雲海や霧も楽しみな季節がやってきました。今回は、こちらのブログでも時々お話している撮影テクニック「紙技(かみわざ)」に使う遮光板を作ってみます。


先ず、上の写真の左、朝焼けと地上の景色が写っています。肉眼で見た感じはこんなふうに見える(感じる)のですが、実際写真に撮ってみると右のようになることがあります。これは景色の方に露出を合わせたために明るい空が白飛び(露出オーバー)している例です。逆に空がきれいに写るようにマイナスに露出補正すると地上の景色は真っ暗になってしまいます。

いつもこうなるわけではなくて、被写体や時間帯によっては空と地上の明るさのバランスが取れることもあるのですが、そういう条件は長くは続きません。そこでよく使われるのが、上半分を黒く、下半分を透明にした「ハーフNDフィルター」です。境目が目立たないようにグラデーション加工されているので「グラデーションフィルター」とも呼ばれています。丸形もありますが、色んなレンズに対応できる角型が主流です。
それをレンズの前に取りつけて使うのですが、フィルターには下記のような問題もあります。

● 値段が高い(大きさにもよりますが1万円前後、数種類そろえるとなると…)
● 画質が落ちる(特にフィルターが汚れていると強い光が反射して悲惨なことに!)
● 色味が変化する(モノにもよるのでしょうが、完全に無色とはならないようで…)
● V字型の谷間など直線ではない明暗の境目に対応できない。

で、これらを一気に解決できるのが、俗に「紙技(かみわざ)」と呼ばれる遮光紙(板)を使う撮影方法です。
先ずは、一番簡単なバルブモードでの長秒時露光の一例を紹介します。夜または明け方や夕方の薄暗い時間帯、カメラを三脚に固定し、地上部分の適正露光時間が10秒以上となるようにISO感度を落として、絞りも調整しておきます。


上の図のように ①レンズの上半分(ファインダーやモニタで空が隠れる位置を確認)を遮光板で隠した状態で、②リモコンでシャッターを開いて露光開始(ボタンをスライドして固定)します。
③原理的にはこの後、ゆっくりと遮光板を上に引き抜けば境目がグラデーションになるのですが、ゆっくりと一定速度でスライドさせるのは困難(境目にムラができてしまう)です。しばらく遮光板の位置を固定しておいた後、短い距離で小刻みに上下させると簡単に境目を目立たなくできます。
④その後、遮光板を上方向にゆっくりとずらして取り除き、⑤空の部分を短い時間露光させてリモコンでシャッターを閉じます。

例えば、全体の露光時間が60秒のうち、最後の空の部分の露光時間を6秒にすれば、空の明るさを1/10にできるわけです。この方法以外にマニュアルモードを使ったり、シャッターを開いた後に遮光板を被せるなど、やり方は色々です。バルブモードで露光時間が長い場合は、それほど難しくありませんが、マニュアルモードで1/10秒以下とかになると遮光板を引き抜くタイミングが非常に難しく、これが「神技?神業?」と言われる所以でしょうね。

次は、いよいよ遮光板の作り方です。作り方と言っても黒い紙を適当な大きさに切ればそれで終わりですが、紙の板は雨に濡れたりすると使えなくなるので、今回はプラスチックの板で作ってみました。


材料に使ったのは、ホームセンターで売っていたクリアブックと言う書類を保管したりするときに使うファイル(100円くらい)です。条件は、表紙部分が黒い軟質プラスチックで、表面がツルツルしていない(反射しない)ことです。PP(ポリプロピレン)シートのような材料を探しても良いのですが、往々にして材料よりも製品の方が入手が容易で安かったりするので、今回は比較してこちらを購入しました。
これ一冊で、表表紙と裏表紙があるので、大きな遮光板2枚、または小さめのものなら4枚ほど作ることができます。


加工は、ハサミで好きな形に切り取るだけです。直線部分は、地平線が真っ直ぐな場合に使います。直角の部分はV字型の谷間など、稜線の形に合わせて使いますが、もともとレンズは周辺に行くほど暗くなるので、空を隠すと言っても中心だけを特に減光したい場合が多いので、曲線部分を作っておくと便利です。(真ん中が暗いセンターNDフィルターと通常のハーフNDフィルターを合わせたような効果が得られます)
あと、表面のテカリが気になる場合は、艶消し黒のスプレー塗料を吹きかけると完璧です。また、カメラバッグなどに入れっぱなしにしていると反り返ってくるので、保管する時は本の間に挟むなどした方が良いでしょう。

さて、この「紙技」、誰が始めたのかわかりませんが、奈良の写真家が昔から良く使っている(奈良以外ではあまりみかけない)と言われています。個人的には誰かに聞いたとか、見たとかではなく、夜景と星を撮るときに夜景が明るすぎるので地上側の光を落とすなどの目的でも以前から黒い布や紙を使っていました。昔、花火を多重露光する時に団扇を黒く塗って使っている人がいましたが、その辺りが原点かも知れませんね。
単に明るさを変えるだけでなく、画面の上と下で露光時間が異なることで星や雲の流れを抑えたり強調したりする効果もあります。

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