- 2019-5-10
- ブログカテゴリー: 新着情報。
天の川を観察しよう!(その2) の続きです。
今回は実際の撮影の方法について解説します。
カメラの設定は、ピントはMF(マニュアルフォーカス)、モードダイヤルはM(マニュアルモード)にします。シャッターは、セルフタイマー(2秒)にします。リモコンケーブルを使う場合は、セルフタイマー無しの「1コマ撮影」でも良いのですが、特に一眼レフカメラでは、シャッターを切った瞬間にミラーが跳ね上がる振動でカメラが揺れてブレることがあるので花火撮影のようにタイミングを重視する撮影以外ではセルフタイマー(2秒)を使った方が安心です。カメラによって、2秒タイマーを選択すると自動的にミラーアップ機能がオンになるものと、ミラーアップ機能とセルフタイマー機能を別々に設定しないといけないものがありますのでご注意ください。
ピント合わせは、三脚にカメラを固定した状態で明るい星にカメラを向けてライブモード(拡大)でモニタ画面を見ながらフォーカスリングを回して行います。単焦点レンズの場合は、明るいうちに無限大に合わせてリングをテープなどで固定しておくと楽ですが、ズームレンズの場合は、ズームして焦点距離を変えた後は必ずピントを確認した方が良いでしょう。
なお、パソコンでの画像処理については次回解説しますが、撮影(記録)はJpegではなくRAWで行うことをおススメします。カメラによっては、JpegとRAWで両方同時に記録できるものもあります。また、長秒時露光ノイズ軽減(NR)機能については、ON/OFFどちらでも構いませんが、ONにして長秒時露光すると撮影後しばらく次の撮影ができないことがあります。したがって流星の撮影など連続して撮影したい場合は必ずOFFにしておきます。
よく天の川の撮影で最適なISO感度や露光時間の値を聞かれることがありますが、レンズの明るさや焦点距離、撮影場所の環境、どんな写真を撮りたいかという撮影意図によっても変わってくるので、これが最適と言う決まった値はありません。先ずは、例えばISO3200、絞り解放(Fの一番小さい値)、露光時間(シャッター速度)20秒とかで試し撮りをしてみて、モニタ画面で確認しながら最適な設定を探ってみてください。暗い場所でモニタ画面を見ると撮影画像が実際よりも明るく感じるので、必ずヒストグラム表示(明るさをグラフで表示)で確認するようにしましょう。
画像が暗すぎる場合は、ISO感度を上げるか、または露光時間を長く(30秒を超えるときはB=バルブモード)します。ただし、
●ISO感度を上げると→ ノイズが増える。色が不自然になる。
●露光時間を長くすると→ 星が点にならずに流れる
という副作用が出てきます。特にISO感度を上げすぎると星が白飛びして色が消えてしまったり、後でパソコンで処理するときに画像が破綻しやすくなるので、カメラにもよりますが少し暗めに撮っておいた方が良い場合もあります。
逆に画像が明るすぎる場合は、ISO感度を下げたり、露光時間を短くしたり、絞ったり(Fナンバーを大きく)して調整します。
その場合は、
●ISO感度を下げると→ ノイズが減少する。白飛びしにくくなる。
●露光時間を短くすると→ 星が流れにくく、点像に近くなる。
●絞ると→ ピントの合う範囲が広くなる。周辺減光やコマ収差※が改善する。
などのメリットがあります。特にF2.0以下の大口径レンズの場合は、一般的に絞り開放で使うよりも、少し絞った方が画質が改善しますが、その辺りはレンズの特徴や撮影意図によっても変わるので、自分の好みの値を探ってみてください。
↑ 左は高ISO感度で撮った例、右はISO感度を抑えて露光時間を長くした例の等倍切り出し(トリミング)です。
(どちらもRAW現像時にコントラストを上げているのでJpeg撮って出しよりもノイズが強調されています。)
感度を上げすぎるとノイズが上昇し、また星の色がほとんどわからなくなります。一方、露光時間を長くしすぎると星が点にならずに流れます。この間で自分の撮影意図にあったバランスの良い設定を見つけると良いでしょう。
※コマ収差:撮影画像の周辺部で点像が一点に収束せずに彗星のように尾を引いた形状になる現象。F2.0以下の大口径レンズを絞り解放に近い設定で使うとよく見られます。
追尾撮影について:
少し上級編になりますが、星が流れないよう長秒時露光して綺麗に写す方法もありますので簡単に解説します。
地球は自転しているので、本来は静止して見えるはずの星も地上から見ると24時間かけて北極星の周りを一周しており、1分とか2分といった長秒時露光で撮影すると点ではなく線になって写ってしまします。これを防ぐためには、地球の自転軸と平行な軸を中心としてゆっくりと自転と逆方向に回転する台の上にカメラを載せて撮影すれば良いわけです。モーターを使って台を回転させる装置は赤道儀と呼ばれていて、最近は比較的安価なポータブル赤道儀も販売されています。(ただし、赤道儀の回転軸を正確に北極星の方向に向ける必要があったり、カメラやレンズの重さに応じて三脚や赤道儀も重量級となるなど機材の運搬、セッティングの手間や天文に関する知識も必要になってきます。)
このほかにPENTAXブランドの一部のカメラに搭載されているアストロトレーサー機能(上の図の右側:簡易赤道儀のような機能)ではGPSと連動して星の動きが自動計算され、それに合わせてカメラ内部のCMOSセンサーが回転・移動することで星の流れを抑えてくれます。
ただし、赤道儀やアストロトレーサーで星の追尾撮影を行った場合は、地上の前景が逆に流れてしまいますので、前景はストロボを使って写し止めるなどの工夫が必要になってきます。
→ 天の川を観察しよう!(その4) に続きます。